タナカ新聞

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関市地域おこし協力隊 上之保地域担当の田中が上之保地域の話題を取り上げて新聞を発行しています。

*鳥屋市地区春祭り執り行われる* 第4号

伝統を守り継ぐ

 

岐阜県関市上之保鳥屋市春祭り様子

笛の音で子役が太鼓を叩いたり、獅子舞いを操ったりする=関市上之保鳥屋市集会所にて



 関市上之保鳥屋市地区にて同地区自治体主催による毎年恒例の春祭りが執り行われた。集会所前で笛や巫女の太鼓に合わせて獅子舞いが舞った。その後、諏訪神社と不動堂前、白山神社へ自治会長や警護を先頭に白面・黒面を被った棒振り・巫女など計24人が行列をつくって練り歩き、各所で同様のことを行った。この日は同地区住民や出身者など約20人が見物した。愛知県小牧市出身の佐藤隆之さん(42)は、嫁が鳥屋市出身で一人暮らしする母の様子を見に来るために年に数回鳥屋市に来ている。「初めて見たが、お祭りをやっていることすら知らなかった。新鮮な気分。小さい子どもが参加していることにうれしく感じた。ひっそりでもいいので可能な限り続けて言って欲しい」と話していた。

 

 

伝統を守り続ける

 住民でもいつから始まったかわからないほど長い歴史がある。現在では川合・明ケ島・行合地区と同じ4月の第1日曜日に行われているが、以前は上之保各地区で祭事の日にちが決まっていた。鳥屋市地区は一週間遅い8日に行われていた。この日の鳥屋市地区の学校は祭り休日だった。日にちが分かれていたのも理由があり、上之保地域住民が各地区のお祭りに行けるようにするためである。例えば鳥屋市住民が明ケ島のお祭りに行くということは当たり前で、お互いのお祭りに行き合う暗黙のルールのようなものがあった。そのため上之保全地域から見物客が訪れ、50年ほど前までは屋台が出ていたり、上之保を離れて住む鳥屋市出身者のための専用バスが出ていたりしたほど賑わいがあった。鳥屋市の人口は平成30年4月1日時点で155人だが、およそ30年で半減している。少子高齢化に伴う急激な人口減少の大きな波が押し寄せているが、現在でも祭事の順序や人数は変わっておらず先人から受け継いだ伝統を守り継がれている。

 

 

 

岐阜県関市上之保鳥屋市春祭り練り歩き

練り歩きの様子

 

語り継がれる信仰心

 15年前まで鳥屋市には小学校があり最大で189名の児童が在籍していた。巫女と大太鼓は4人の小学生(以下:子役)が行う。子役をした家庭には無病息災などの御利益があるとされ、各家庭の両親にとって憧れの存在であった。しかし、次第に子どもは少なくなり、憧れとはほど遠い存在になりつつあるが子役に対する信仰心について地域内で語り継がれていることや「子役は欠かせない存在」だという地域住民の強い想いやおり変わらず、わずかに住んでいる子どもや同地区出身の娘婿夫婦の子どもや孫に頼んで人数を確保し子役の役職を維持している。

 

 

過去に2つの神輿登場

現在では神輿の出番がなくなってしまったが、6年前まで2つの神輿が出ていた。昭和52年から同地区消防団が神輿を担ぎ始めたのを皮切りに、のちに同地区の子ども育成会も毎年この時期になると消防団とともに発泡スチロールのようなもので神輿を作り、計2つの神輿が登場していた。しかし、人口減少の波には勝てず、子どもや消防団人員不足が深刻化し、子ども神輿は6年前、消防団神輿は3年前に無くなった。

 

 

岐阜県関市上之保鳥屋市春祭り獅子舞い

獅子舞いは迫力満点=同地区白山神社にて

 

いつまでも続けて行きたい

 同地区の田畑集落に住む波多野良宏さん(76)は「よく知り合いからおけ(止めろ)と言われる。先人から受け継いだ伝統を止めるわけにはいかない。将来、人数が確保できなくなるかもしれない。上之保外に住む人を公募したり、祭りに関わる人数を減らしたりしてでも続けていきたい」と想いを語る。

 

 

 

タナカ記者より

 上之保には、1石に33体の石仏が掘ってある「西国三十三観音」が9か所ある。1地域にこれだけあるのは珍しい。全く文献は残っておらず、なぜ9か所もあるのか?自動車もない時代にどのように運んだのか?そもそも、どういう意図や想いで建てたのか?などなど考えれば考えるほど謎が深まるばかりである。一つ言えるのは昔、飛騨街道と呼ばれた峠の入り口や途中に多くの観音塔があることから旅の安全を守る神様ではないかということである。現在では全く感じないが、それだけ当時は信仰心が深かったのだろう。上之保各地区で毎年行われているお祭りも関連性はないかも知れないが「子役をした家庭には無病息災などの御利益がある」と言われていたことも信仰心が深かった名残ではないかと今回の取材で感じた。市街は隣に住む人の顔も名前も知らない。多くの街では忘れ去られているだろう。さらに「しんどいでおいた」と言えばそれで終わり。先人が遺した伝統を途絶えさせないように続けようとしている人々には頭が上がらない。ぼくにできることは情報発信しかないが、人々の想いを取材によって汲み取り発信していきたい。

 

 2018年4月11日発行

 

 

 

タナカ新聞とは・・・??

 

岐阜県関市上之保地域で関市地域おこし協力隊として活動する田中利弥(私)が、上之保地域で独自の目線で見つけたヒト・モノ・コトを取材し、不定期で発行。

 

〇掲載場所:上之保生涯学習センター・上之保温泉「ほほえみの湯」

 

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